東京高等裁判所 昭和57年(行ケ)253号 判決
一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決にこれを取消すべき違法の事由があるかどうかについて判断する。
成立について争いのない甲第三号証及び第四号証の一ないし四によれば、本願発明の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載は、前記当事者間に争いのない請求の原因二のとおりであるところ、引用例にも無端ベルトと磁石とそれらを支持する装置とを具えた磁気選別機が記載されており、両者は、無端ベルトが上部及び下部通路を持ち、この下部通路が曲線部とこの曲線部の上流及び下流の両側に形成された直線路を持つ点、磁石が前記曲線部の両側にそれぞれ配置されて前記曲線部の上流及び下流にそれぞれ磁界を発生し、そのため該磁界内の磁性材料が前記直線路に沿つて前記ベルトに吸引されて移動し、前記曲線部の附近でベルトから一時的に変位され、曲線部の下流で再び吸引されて移動する点でも一致していることが認められる。
しかして、本願発明において、ベルトに吸引された磁性材料が「一時的に変位」され、「再び吸引」されるのは、ベルトの下部通路が曲線部とこの曲線部の上流及び下流の両側に形成された直線路を持ち、磁気組立体が曲線部の両側にそれぞれ配置されるとの構成に基づいて生起するものと解されるところ、引用例においても本願発明の右構成と同一の構成のものが記載されているものであるから、引用例のものも本願発明と同様ベルトに吸着された磁性材料が曲線部の付近で「一時的に変位」され「再び吸引」されるものとみられる。審決の認定もこれと同趣旨に出たものと認められ、その認定に誤りはない。
原告は、本願発明においては、磁性体の一時的変位及び再度の吸引を行わせるための特段の設定が意識的になされているのに対し、引用例の発明においては、このような特段の設定はなされておらず、且つ引用例のものは磁性体の一時的攪拌、非磁性体のふるい落しという技術課題を意識してしたものではないから、両者は異る発明である旨主張するが、本願発明が原告の主張するような「特段の設定」をした磁気選別機に関するものであることは、本願発明の特許請求の範囲に記載されたところから分明する本願発明の要旨とするところではないから、本願発明と引用例とはその点において異なるものと主張することはできず、また、引用例のものが、仮に原告主張のような技術的課題を意識してしたものではないにしても、そのことの故に引用例のものが本願発明と別発明になるものとすることはできない。原告の主張は理由がない。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。
〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。
ベルトと、このベルトを上部及び下部をもつように連続的な閉じた通路に沿つて動かすために前記ベルトを支持する装置と、前記下部に沿つて前記通路の上流及び下流に配置される磁気組立体と、前記下部に沿い前記上流及びこれより離隔する下流にそれぞれ磁界を発生するように前記磁気組立体を支持する装置と、から成り、前記ベルトを支持する装置は、前記下部に曲線部をそしてその曲線部の上流及び下流に前記ベルトが動く直線路をそれぞれ限定し、そして前記磁気組立体は、その一部を前記ベルトの移動路及び前記曲線部に関して前記曲線部の両側に配置されてそのため前記磁界内の磁性材料が、前記直線路に沿つて前記ベルトに吸引されて移動し、前記曲線部の付近で前記ベルトから一時的に変位され、前記曲線部の下流で前記ベルトに再び吸引されて移動するごとくなつた磁気選別機。